ディスクエラーレート計測ソフトウェア「VPTools」と JIS Z6017 準拠の検査ソフトウェア「Pioneer Error Rate Utility」の違い

DVDやBlu-rayのメディアは、記録した際の精度や、記録層の経年劣化によって読込エラーが発生します。

読込エラーは一般に

  • 再生できない
  • ノイズが発生する

などの症状を指します。

ただ厳密には光学メディアの特性上、どんなに精度の高い記録を行い、記録層の劣化が無かったとしても、ある程度のエラーは必ず発生します。

これは「訂正可能なエラー」と言われます。エラーではあるものの、ドライブ内の補正機能により訂正され、利用する上では全く問題のない状態となります。ただ、一定以上のエラーレベルになると「訂正不可能」となり、読込エラーやノイズとなってしまいます。

エラーレートを計測するソフトウェアは、この「訂正可能なエラー」を含むエラーのレベルを数値としてカウントして、基準値を超えるかどうかの判定を行うために用います。

つまり、現時点では読込エラーが発生していないメディアでも、エラーレートが基準値を大きく下回っている品質の良いものなのか、基準値に近く品質が悪いものなのかを分別し、短期間で読込エラーとなってしまうメディアをふるい落とす参考になります。

例えば、1年ごとにエラーレートを計測し、基準値以下であればそのまま保管、基準値を超えた場合には複製して新しいメディアに置き換える、いわゆる「マイグレーション」に活用できます。


今回はそのようなエラーレートを計測するソフトウェアでも、市販されている低価格帯のBlu-rayマルチドライブ「WH16NS48DQ」に付属されている「VPTools」と、業務用アーカイブドライブ「BDR-PR1MC」に付属されている「Pioneer Error Rate Utility」にはどのような違いがあるのか、簡単に紹介したいと思います。

まず、アーカイブドライブについて説明します。

アーカイブとは保管を意味し、長期間残すことを目的とした専用品を使うことを前提としています。

対象は公的文章や知的財産の資料など、保存されているデータに高い価値のある物がほとんどでしょう。

言い方を換えれば、万が一記録メディアの読込エラーによってデータが扱えなくなってしまったら多大な損失となる物が対象となります。

そのため、特に品質が高く劣化しにくい素材で作られた記録メディアと、校正の取れた精度の高いドライブと、最適化したレーザー出力を揃えた完成度の高い組み合わせにより実現します。

そこに、アーカイブの標準規格である「JIS Z6017 【電子化文書の長期保存方法】」に準拠する方式とするため、規定されているエラーレートの検査が行える「Pioneer Error Rate Utility」が組み合わされることによって、信頼のある長期保存を確立しています。

上の画像は「Pioneer Error Rate Utility」の検査画面の一例です。

検査結果がグラフとして表示されていますが、このグラフが信頼の持てる数値であるのかどうかが重要です。

まず、JIS Z6017に準拠する結果が取得できること。そして、表示されたグラフや数値が機器の精度による影響で変化していないことが求められます。

業務用アーカイブドライブは技術者による校正が行われ、正確な数値が取得できることを保証されていますので、機器の精度による影響でグラフや数値の変動が無く、信頼性が確保された結果を得られます。

大切なデータを守るため、安心の運用が可能となります。


一方、市販のドライブは基本的に校正はされておらず、ドライブの個体による読込精度にブレがあります。

一方のドライブで出力されたエラーレートと、もう一方のドライブのエラーレートで目に見えた差が発生する可能性があります。

そのため、同じドライブで変化を測定する程度の参考にはなりますが、規定の数値を上下するかどうかの判定を行う用途としては、それほど信頼は得られません。あくまで目安にする程度の精度です。

そのため、個人用途では必要十分と思いますが、業務用として重要文書を保管するメディアの検査には十分な精度とは言えません。

ただ、一般に使われている精度のドライブですので広く使われているプレーヤーやPCと同程度と考えれば、一般向けに提供するメディアの品質検査用途としては適していると言えるでしょう。

レンタルビデオ屋さんが、レンタルを繰り返して傷が目立ってきたDVDをこのような方法で簡易エラーチェックを行って廃棄処分するかどうかの目安にしていると聞いたこともあります。

「VPTools」では、データの区切りであるブロック単位でエラーの数を累積して棒グラフを作り、それを横軸に並べることで曲線グラフとして表示します。

類似するソフトウェアである、プレクスターブランドの「PlexTools」や「PlexUTILITIES」、ライティングソフト「Nero」に付属していた「Nero DiscSpeed」と同様の方式です。

例えばDVDの規格でブロック内のPIE(ParityInnerError)は280以下であることを規定されていますが、それ以外の具体的な数値は無く、PIEが280以上の場合でもドライブの訂正機能が強力であれば問題ないことも多く、あくまでおおよその基準にしかなりません。

また上でも書いたように、ドライブの個体による差があるため一定の基準があってもそのドライブの精度によって大きく見積もられたり、小さく見積もられたりしてしまい、アテになる数字とは限りません。ある程度の参考値と見るべきでしょう。

そのため、実際にブロックノイズや読込エラーが発生したディスクを基準とするべきです。その計測結果の数値とグラフを保存しておき、そこからどの程度下回っていればOK、と自身で基準を設けます。

厳格な基準値を設け、そちらに沿う必要がある場合は、業務用アーカイブドライブをご利用下さい。


まとめます。

  • ある程度の目安を、自身が作った基準値に収まっているのかを確認する用途であれば、市販ドライブ「WH16NS48DQ」と「VPTools」
  • 厳格な数値と、規格に準拠した保管を行う用途の場合は、業務用アーカイブドライブ「BDR-PR1MC」と「Pioneer Error Rate Utility」

このような比較となります。

用途と要求は多岐に渡るため、この場合はこちらがオススメ、と単純に言うことは出来ませんが、対象となるデータの価値が高く計測ミスが許されない場合には業務用アーカイブドライブを、データが失われても大きな損失とはならずメディアの取捨選択の目安にする程度であれば市販ドライブを使うのが妥当でしょう。

 

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